こだわりと信頼関係が化粧品の主成分

私は化粧品の処方を作ってくださる方を、お菓子作りのパティシェのような
存在だと考えています。

ケーキも原料はさほどの違いはありません。小麦粉、バター、卵-------。
でも、どれひとつとして同じ味のケーキ屋さんは存在しません。
皆それぞれにこだわりを持ち、小麦粉は何処産のもの、
卵は厳選した飼料しか食べないニワトリが産んだもの。
そしてそこに加わる手間や隠し味など。それぞれに工夫が加わるのでしょう。

化粧品も同じだと思うのです。
原料は同じものを使用しているのに、触感から匂い
最後は効果までもがそれぞれ違います。



私が経験から学んだこと。
素晴らしい商品を完成させるには、いかに素晴らしいパティシェと出会い、
こだわりをカタチに出来るかにかかっていると思うのです。

配合の割合、手間のかけ方。
同じ原料を提示してもまったく違った製品が出来上がってきます。
そしてもうひとつ重要なことはお互いの信頼関係。

石鹸の試作を開始してから、しばらく経ったある日
試作をお願いしていた工場の工場長と電話でお話していたら突然

「私はもともと麦飯石なんて石鹸に入れたくなかった。」

とおっしゃるのです。恐らく私が何度も何度も試作が気に入らないと
やり直しをお願いしていたので嫌気がさしたのだと思います。

「それはルール違反ですよ。私は始めから麦飯石を入れて石鹸を
作ってくださいとお願いしたはずです。今頃そんなこと言われるなんて
話が違います。これからすぐにそちらに行きます。」

と、車を飛ばして工場に行きました。

帰り支度をしていた工場長と直接お会いして、麦飯石がどんなに素晴らしいか
実際に私が自分で石鹸を作って効果を実感したことなどを一気にしゃべりました。
外はもう真っ暗になっていました。

そのとき工場長が言ってくださった言葉を昨日のように思い出します。

「今までこんなに試作を繰り返した人はいなかったので正直うんざりしていました。
匂いが違うの触感が違うのと----うちの工場では皆あなたのことを犬のように匂いを
嗅ぎ分ける人だと言っていましたよ。でも本気ですね。それといいものを見抜く力は
おありのようだ。とことんお付き合いしますよ。」

それからしばらくして、私の思い描いていた素晴らしい商品が完成したのです。

やはり人は、会って話をしてお互いの思いを伝える作業を疎かにしては
いけないことを痛感しています。
何でもメールで済ませる世の中ですが、会ってはじめてこちらの意図することを
理解してもらうことができるのです。
これからもこの作業には手は抜かないでいこうと思っています。(続く)